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高松家庭裁判所 昭和53年(少ハ)1号 決定

少年 Y・Z(三四・一・一六生)

主文

本件申請を却下する。

理由

(申請の理由)

別紙のとおり。

(当裁判所の判断)

本件記録ならびに当裁判所調査官○○○の調査の結果および昭和五三年九月一四日付、同月一六日付審判廷における少年の陳述によると、仮退院後の経過はほぼ「申請の理由」のとおりであつて、少年が犯罪者予防更生法三四条二項二号、三号、四号に定める一般遵守事項ならびに同法三一条三項により四国地方更生保護委員会が定めた特別遵守事項に違反したことは一応これを認めることができる(但し、覚せい剤の譲り受けおよび自己使用の点については、松山少年院に収容される以前の行状であるから、これを除くこととする)。

ところで右一六日、当裁判所は少年を同調査官の観察に付し、現在まで行動観察を続けてきたが、その間少年は、暴力団○○会事務所への出入や同会関係者との交際をやめて割烹「○」で調理士見習としてまじめに働いており、また内妻○○○○との家庭生活においても落着きと安定とを取り戻し、担当保護司の指導にも従うようになり、その後は何らの非行もみられない状態にある。したがつて、現段階にあつては、少年を少年院に戻す必要はなくなつたものと認められる(担当保護観察官○○○○も在宅試験観察後の少年が安定した生活状態にあることを認める)。

以上より考えて本件申請は理由がないので、犯罪者予防更生法四三条一項、少年院法一一条三項、少年審判規則五五条により、主文のとおり決定する。

(裁判官 打越康雄)

戻し収容申請の理由

本人は昭和五一年六月二三日松山少年院を仮退院し、同日高松保護観察所に出頭のうえ指定帰住地である高松市○町××-×A子のもとに帰住し、同保護観察所の保護観察下に入つたもので、仮退院に際し、犯罪者予防更生法第三四条第二項に定める事項(以下「法定遵守事項」という。)及び同法第三一条第三項により、四国地方更生保護委員会が定めた事項(以下「特別遵守事項」という。)の遵守を誓約し、遵守事項に違反したときは少年院に戻し収容されることを十分承知していたものであるが

一 昭和五一年七月一七日から同月三一日まで塗装工同年八月六日から同月下旬までタイル工、同年九月初ころ短期間喫茶店調理見習、同年一二月七日から短期間スナックバーテン、以後、昭和五二年二月一六日から同月二八日までと同年三月一一日から同年七月六日まで及び昭和五三年三月五日から同年四月一三日までの間それぞれスナックバーテンとして短期間就労しては職場を転々し、同年七月一日高松市○町×丁目×番×号割烹○本店に就労したものであるが、前記就労中以外は仕事につかず徒遊していた。(高松家庭裁判所の試験観察中の補導委託期間を除く)

二 仮退院後間もなく、B、C、Dらと不良交友が復活し、パチンコ遊びで徒遊した。

三 昭和五一年六月ころから同年八月ころの間四~五回にわたりBから覚せい剤を譲り受けて、これを自己の体内に注射した。

四 昭和五二年一月二六日高松市○○町の喫茶「○○○」において、同店の客Eに依類破損の損害を与える暴行を行なつた。(二万円弁償)

五 同年六月一一日午前一時五分ころ高松市○町×丁目○○通りにおいて、香川県木田郡○○町大字○○××番地F(三一歳)に因縁をつけられ顔面等を殴打されたことに立腹し、右手拳で一回殴打し頭突きで二回位反撃し、足蹴りする等の暴行を加え、同人に全治一〇日間を要する右前額打撲傷、左顔面打撲傷、左下腿挫創を与えた。(不処分)

六 昭和五三年三月一〇日午前三時三〇分ころ、Dほか一名と高松市○○町×番地××○○時計店前路上を通行中、高松市○○町××番地の×G(二〇歳)ほか二名と些細なことから口論となり、Gに加療一週間を要する顔面頸部挫創の傷害を負わせる等の暴行を行なつた。(審判不開始)

七 同年六月ころから高松市内の暴力団○○会組事務所に週一~二回出入りして清掃する等して同組組員と行動を共にしていた。

八 昭和五一年九月二日高松市○○町×丁目××の××○○ビル××号に無断転居し居住していたが、昭和五二年三月一九日高松市○○町×丁目×-××○○荘の実姉H子のもとに無断転居した。

九 昭和五三年二月八日高松家庭裁判所において不処分となり補導委託先から前記実姉のもとに帰住したが、同年四月ころから同年六月末日ころまでの間無断家出し、高松市○○町のDの居住するアパート等で起居していたが、その間所在を明らかにしなかつた。

以上の事実は高松保護観察所長提出の戻し収容申出書、本人に対する質問調書並びに保護観察事件記録により明らかであり、主任官は本人に対し、昭和五一年七月八日、同年一〇月一三日、二二日、二八日、同年一一月二九日、昭和五二年二月一五日及び同年三月二二日の七回にわたり呼出して面接し指導したにもかかわらず問題行動を反覆したものであり、前記一の事実は特別遵守事項第三号後段に、二の事実は法定遵守事項第三号及び特別遵守事項第八号に、三、四、五及び六の事実は法定遵守事項第二号に、七の事実は法定遵守事項第三号に、八の事実は法定遵守事項第四号に、九の事実は法定遵守事項第四号及び特別遵守事項第七号に、それぞれ違反しているものでその情状は重い。

本人は幼時期に実父と生別し、仮退院後間もない昭和五一年六月三〇日に実母も死亡し、その後実姉も結婚する等生育歴、家庭環境に同情すべき点は認められるが、実姉の保護能力には期待できず、保護観察による改善更生は困難と認められるのでこの際少年院に戻して収容し、相当期間更に矯正教育を施し、健全な社会適応性を涵養することを相当と認める。

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